2023.11.20
京都公立高校の入試制度は2014年(平成26年度)から現在の形になって9年と半年が過ぎました。来年度2月3月入試で10年になります。
この改革で70年近く変わらなかった公立高校の入試制度「進学の平等」「バス停方式」に大きな変化が起こったわけですが、9年が経ってその改革の結果がはっきりと見えてきました。
1996年に嵯峨野コスモス創設、2003年は堀川高校に探究科創設・西京高校にエンタープライジング科創設などの専門学科群(ほかに桃山高校の自然科学科など)の改革はすでに始まっていました。これらの特進系進学コースが設けられた後で府内の高校すべてを巻き込んだ制度の改革が断行されたわけです。
今回はこの平成26年の高校入試制度の変革で変わったことを書いていきます。
改革の裏側には極めて政治的なことがあったわけですが、ここではそのことには触れずに改革の成果のようなものを見ていくことしたいと思います。
改革の4つのポイント
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改革前 |
改革後 |
① |
南北通学圏の設定 |
2通学圏の統合 |
② |
普通科の類型 |
普通科 |
③ |
1回の受検 |
複数回の受検機会 |
④ |
総合選抜制度 |
単独選抜制度 |
通学圏は京都府内で北から丹後通学圏、中丹通学圏、口丹通学圏、京都市・乙訓通学圏、山城通学圏に別れました。(改革①)
各高校にあった普通科Ⅰ類(進学コース)とⅡ類(特進コース)はなくなりました。(改革②)
3番目の大きな改革は受検の機会が3回(前期・中期・後期、後期は大幅な定員不足で行う)になったこと(改革③)
そして、この改革の最もインパクトを与えたことがそれまで教育委員会に提出していた願書を各高校に出願することにより自由に高校が選べるようになったこと、そしてそれによって高校間の競争が生まれたことです。(改革④)
これらの改革でも京都市・乙訓通学圏のことについて書いていきます。
各高校の競争が生まれたことはおよそ公立高校を3つのグループ群に分けたと考えると考えやすいと思います。
公立高校のグループのイメージ図(大学の序列化を参考にして)
第1グループ・・・堀川・嵯峨野・桃山・洛北・西京・山城など
第2グループ・・・鳥羽・紫野・鴨沂・洛西・日吉ヶ丘・開建など
第3グループ・・・乙訓・向陽・西乙訓・朱雀・洛東・東稜など
です。(大学名はわかりやすくするため関西中心に書いています)
こちらにもちろん堀川探究などの専門学科群、さらに京都工学院・すばるなどの職業に関する専門学科群が加わります。
はっきり言えますことはこの高校の序列化が改革の大きな点だったといえます。
なぜこのような序列になったかは進学系専門学科の有無、各高校の伝統や立地などが絡み合って生態系を作るような形で決まっていったと思われます。
それではこの序列化によって高校の出口である大学合格実績を比べてみるとどうなっているか。2015年(卒業年、2012年入学者)と2023年(2020年入学者)を比較してみましょう。
比較したのは2015年4月12日号のサンデー毎日「全国主要2336高校 有名104大学合格者数」と2023年4月15日号のサンデー毎日「全国主要2409高校 有名110大学合格者数」です。
2015年版には鴨沂高校、京都工学院、清明高校、洛水高校、洛東高校は載っていません。また、2023年版には鴨沂高校、東稜高校、西乙訓高校、洛水高校、洛東高校が載っていませんので表から除外しています。上位グループ6校とそのほかの高校11校が対象になっています。
高校間に競争原理を取り入れたので勝ち組は勝ち続け、それ以外は伸び悩んでいる姿が見て取れます。
表では左が2023年、右が2015年です。左から東京大学と京都大学の合計(総数)中央に東京大学と京都大学の合計(現役)右端が難関国立大学です。難関国立大学は北海道大学、東北大学、東京工業大学、一橋大学、大阪大学、神戸大学、九州大学、大阪公立大学の8大学です。
2015年と2023年では公立高校の卒業者数は上位校では5%減、下の11校では19%減になっていることのも注意が必要です。
表が少し見にくいので補足解説をいたしますと、上位6校では
東大+京大は1.2倍、難関国立大学は1.5倍、関関同立は1.3倍なっています。
下の11校では入学者がいないために「不能」となっています。
以上のことから
分析1・・堀川探究、嵯峨野コスモス、桃山自然科学、山城文理総合など普通科
専門コースか中高一貫コースを持つ高校(洛北、西京)が伸びている。東大京大で50%増、難関国立で30%増。競争原理がはたらきこれらの高校の専門コースではない普通科に生徒が集まっている。
分析2・・表の下側11校では難関国立大学を狙うことより高校の指定校推薦を
使って関関同立など関西主要私立大学に早く入学を決めてしまう傾向が
近年より強くなっている可能性が高い。
分析はあくまで主観によるものですのでご注意いただく必要があります。