2024.01.31
数学の成績は、頭の良し悪しで決まってしまい、社会や英語と違って、努力してもなかなか伸びないと考えている人が多いかもしれません。確かに頭の良し悪しに左右される教科だと言えないこともありません。
しかし、頭の良し悪しとはいったい何なのでしょうか。頭の良し悪しを生まれつきのように考えてしまいがちですが、頭の良し悪しは今までの勉強の仕方で決まるのです。
数学は記憶より理解することが大事な教科です。理解する力こそ、頭の良し悪しで決まると考えてしまうので、数学は努力しても伸びない教科だと考えてしまうのです。では、理解するとか分かるというのはどういうことなのでしょうか。なぜ、分かったり分からなかったりするのでしょうか。
分かるということは、今まで自分の頭の中にある知識と新しく入ってきた情報がうまくつながるということです。つまり、考えることとは記憶していることと新しく入ってきた情報を照らし合わせてつなげる作業なのです。
例えば、中学1年で「方程式」の計算を理解しようとすると、「正負の数」と「文字と式」がわかっていなければ、どんなに頭が良くても理解できません。逆に、「正負の数」と「文字と式」さえ分かっていればどんな人にも理解できます。問題は本当に理解している状態がいつやってくるか?です。中学1年で習う「正負の数」の本当の理解が中3の時にやってくる人もいます。
このように、理解するために必要な基礎知識が身についていれば、誰でも理解できるのです。ですから、頭の良し悪しとは、しっかりした基礎知識が身についているかどうかということであって、けっして生まれつきのものではありません。
もし分からないことがあって前に進めないのであれば、前に戻って学び直すさかのぼり学習が一番の近道になります。しかも2回目3回目の学習は気づかなかったことを気付かせてくれることが多いのでさらに有効です。
数学の基礎知識には2段階あります。それは、基本問題を解くための基礎知識と応用問題を解くための基礎知識です。言葉を変えていうと、学校の定期テストで70点をとるための基礎知識と100点をとるための基礎知識です。
70点をとるための基礎知識は、小学校の「四則計算」「小数」「分数」を理解していれば、後は中学校で習う各単元の基本問題を習う順番に従って理解していけば、常に70点は取れるようになります。70点をとるための基礎知識は、明確で量も多くないのです。ですから、もし理解できない時は、どこの知識が足りないかを考え、その知識を埋めていけば必ず理解できます。今まで10点しかとったことがない人でも、夏休みなどに欠けている知識を埋めれば、学校の授業が良く分かるようになり、すぐに70点がとれるようになります。
70点以上をとろうとすると、基礎知識は少し複雑になり、量も飛躍的に増えてきます。
例えば、「方程式」の文章題を解けるためには、小学校で習った「代金計算」「割合」「速さ」「単位あたりの量」などほとんどすべての知識が必要になってきます。文章題の日本語は、国語の教科書の日本語より難しく感じます、しかも正確に解釈しなければなりません。ですから、算数や数学の知識だけでなく、国語力も必要になります。
90点以上をとろうとすると、難しい文章題や応用問題を解く必要が出てきます。そのためには、「応用力」つまり「深く考える力」も必要になります。「深く考える力」を育てるのは一見難しそうですが、「考える力」というのは、知識をそのままで使うのではなく、知識と知識をつなげて使うということです。慣れれば難しくはありませんし、そのために特別の基礎知識がいるわけでもありません。
数学の難問は、問題を見ただけでは、答までの道筋が見えないように作られています。基本問題や簡単な応用問題などは、問題を見ただけで、答えに行き着く道筋が見えてきます。しかし、難問と言われる問題は、問題を見ていくら考えてみても、答までの道筋は見えてきません。難問と言われるものは、応用問題の組み合わせでできているのです。ですから、簡単な応用問題にあたる部分を先に考えてから、次の応用問題を小さく砕けば解けるようになっているのです。
テストにしろ受験にしろブレイクスルーする方法が必ずあります。
例えば、図形問題の応用問題は誰もが難しいと感じます。特に立体図形は難しく感じます。しかし、実は、本当の立体図形の問題は、切断面を見つけてそれを正面から見ると実は平面図形の問題なのです。立体図形の切断面をどのように入れるのかを考えて解くことが間に入っているだけです。
平面図形も難しいと考える人も多いと思いますが、平面図形はいきなり答えを出そうとしないで、問題から分かる長さや角度をどんどん書き込んでから、問題を読み直してみると、糸口が見つかる形になっています。平面図形を難しいと考える人は、問題からいきなり答えを出そうとしているために、難しく感じるのです。図にすべての情報を書きこむことから始まります。
たとえて話をすると、計算問題や簡単な問題は平らな土地で目的地が見える状態です。応用問題は自分が立っている所と目的地の間に山があって目的地が見えない状態なのです。ですから、一つ山を越える作業を入れれば目的地が見えるようになるのです。山が二つ、三つある難問もありますが、公立中学校レベルの難問は、たいてい山は一つです。ですから、簡単な応用問題が解ける人なら、コツさえつかめば必ず解けるようになります。
さらに高校の数学は一見難しそうに見えますが、実は中学の難問に比べたら、この山は少なく、しっかりその単元を理解していれば、後は練習量だけでたいていの問題は解けるようになります。この練習量をしっかりこなすことが高校数学では必要となります。そのかわり、その練習するための時間を確保することが難しいのです。時間の確保が極めて難しいのです。
今まで書いてきたことをまとめますと、目標とする点数で数学の勉強の仕方は違ってきます。まだ70点が取れていない人は、まず70点をとるための勉強をすることです。「四則計算」「分数」「正負の数」を確実にし、基本問題だけを、習う順番どおりにしっかり見につけていくことです。そして、学校の授業をよく聞いて、練習問題をたくさん解いてミスが出ないようにすれば、誰でも70点はとれるようになります。
70点以上とれている人は、90点をとることを目標に勉強することです。基本問題の基礎知識には問題はありませんから、簡単な応用問題を解くための基礎知識をしっかり身につけ、十分な練習問題を解くことです。
80点以上とれている人は、100点を目標に勉強することです。基礎知識にはまったく問題がないので、難問を解くコツを身に着けることです。応用問題をたくさん解いて、難しい問題も実は簡単な応用問題の組み合わせに過ぎないことを実感することです。
たいせつなことは、いきなり高得点をとろうとせず、自分に合った勉強の仕方をして、70点がとれるようになったら90点を目標にし、90点近くとれるようになったら100点と時間をかけて目標を上げていくことです。
数学の学習のもう一つのコツは、自分の力に合わせて重点的に勉強する問題レベルを決め、それ以外の問題レベルにできるだけ時間をかけないことです。数学は、他の教科に比べ、はるかに問題を解くための時間がかかります。ですから、70点以下の人が70点を目指すのなら、基本問題だけに時間を割き、応用問題は解かないことです。また、70点以上とっている人が、解けると分かっている基本問題をたくさん解くのは時間の無駄です。基本問題は計算ミスを無くす練習程度にして時間をかけず、簡単な応用問題に集中的に時間をかけることです。目標点が90点以下なら、難問は解かないことです。100点を目標にする人は、難問に時間をかけ、それ以外の問題にはできるだけ時間をかけないことです。限られた資源は勉強時間です。時間をいかに有効に活用するかが、数学の点数をあげるための最もたいせつなヒントになります。
まとめ
①分からないところがあれば勇気をもってさかのぼり学習
②目標設定に合った学習法に限られた力を集中する